TeX はバッドノウハウか?

(3/22 追記)さらに書き直しました。→バッドノウハウと TeX と書籍組版

(3/16 追記)論点が不明瞭なので、→バッドノウハウについて、ふたたびに書き直しました。

今頃になつてやうやく「バッドノウハウ」と云ふ言葉を知る。少し長いけど負けずに、→バッドノウハウと「奥が深い症候群」より引用。

バッドノウハウは、ソフトウェアの複雑怪奇な仕様が歴史的に引きずられ、根本的な改善は行われないまま、そのノウハウが文書によって受け継がれることによって蓄積が進行する。Unix 上で広く使われているツールとしてはTeX, Emacs, sendmail, bind, perl, gnuplot, procmail などは、役に立つツールであると同時に、その複雑怪奇な仕様によって長年に渡ってユーザを苦しめ続け、バッドノウハウの温床として悪名が名高い。

ここで、バッドノウハウの実例として TeX が挙げられてゐる。これには少し補足が必要だと思ふ。

TeX は、書籍の組版にも耐え得る高度な組版ソフトとして設計されてゐる。書籍の組版と云ふのは、そこらの安易なワープロソフトとは根本的に異なる世界だ。

まづ、ルールの数が異様に多い。有名どころでは、シカゴ大学出版局の組版ルール、いはゆる「Chicago Rule」は、968 ページもある(ISBN:0226104036)。

そしてこの多数のルールを、数百〜数千ページもの原稿(表や図版も含まれる)に対して、個別に指定する必要がある。

あとひとつ、組版処理は、修正(校正)が入るたびに最初から全部やり直す必要があるので、バッチ処理となる。数千ページの原稿に対して、修正(校正)のたびにインタラクティブな指定を行なふなんてあり得ない。つまり、すべての組版ルール指定は、事前に確実に行なつておく必要がある。

要約すると、多種多様のルールを記述でき、数千ページもの原稿データをハンドリング可能で、完全なバッチ処理システムである必要がある。あんまり要約できてない。

まあともかく、このやうな特徴を持つ「組版」と云ふタスクのためのツールとしては、TeX は、十分にエレガントなものだと思ふ。TeXバッドノウハウ呼ばはりできるのは、組版と云ふタスクの困難さを知らないからだと思ふ。

そりやあ確かに、ワープロ代はりに使はうとしてゐる人から見れば、TeX はひどいツールだと思ふ。でもそんなのつて、F1 の車で公道を走つて「運転しにくいから駄目だ」と言つてるやうなものだと思ふ。

(3/16 追記)論点が不明瞭なので、→バッドノウハウについて、ふたたびに書き直しました。