血を見る

血が苦手、といふ人がゐる。血液檢査とかで血を拔かれるときに、目をそむけたり、ギユツと目をつぶつたりする。

つまり「見るのも嫌だ」といふことだと思はれる。逆に言ふと、「見なければなんとかなる」といふことでもある。

ちよつと待てよ、「見なければなんとかなる」だつて?

見なくても、針を刺されれば痛いので、血を拔かれる瞬間は、はつきり認識できる。もしも全然痛みがなくて、知らぬ間に終はつてしまふなら、「見なければなんとかなる」のだらうが、血液檢査はさうぢやない。

目をつぶるなんて、無意味だ。をかしい。ちやんと目を見開いて、現実を正しく認識すべきだ。それが人として正しい姿だらう。

……といつたことを考えてゐる間に、どうやら血を拔く作業は無事終了したみたいだ。ああ良かつた、今日もなんとか血を見ずにすんだ。